目次
殿堂入り
Outer Wilds (& DLC:Echoes of the Eye)
プラットフォーム:Steam
ジャンル:SFアクションアドベンチャー
評価:10.0/10.0
以前操作体系が合わずに挫折した探索アドベンチャーに再挑戦。
ものすごい勢いで沼に転がり落ちて沈みました。
執筆時点では、本編をクリアして、未回収要素を探索中。やや厄介な操作体系、(それすらも魅力と言いたくなってしまうものの)不便・不親切であることは決して否定できない導入の流れ、一部ゲームとしてどうかと思う要素もありながら、それらの減点を全て打ち消す加点により満点です。
「何も知らないままやってお前の感想を聞かせてほしい」という感情になることや「情報を受け取る順序によっては、異なる視点で異なる体験をしている可能性がある」のが気になるのは十三機兵防衛圏などと同じですが、決定的な違いは、Outer Wildsは高すぎる自由度により「視点と体験の異なる度合い」が従来のアドベンチャーゲームとは比較にならない程にブッ飛んでいること。それゆえに、他者の体験がもはや「ひとつのコンテンツ」として成立すると言っていいレベル。
そして「宇宙×SF」というジャンルに個人的に求めるものが、全て詰まっていた。本編の時点で。
この1週間ずっとOuter Wildsに狂ってるけど、DLCを残した状態で既に「楽しめそうな人には布教したい」となってるので、そういう人に届くようにちょっと解説しときます
— ナオプーナ (@na_op_oo_na) June 20, 2022
ちなみに俺がOuter Wildsに似た「読後感」を感じてきた別作品は○○○○○○○○○、○○○○○○○○、○○○○○○○、○○○○○、○○○○○○○○○○○○です
— ナオプーナ (@na_op_oo_na) June 20, 2022
受け取るものに個人差あると思うので一例です https://t.co/QmZBY1hcMV
これ以上言えることは、残念ながら何もない。
DLCを遊ぶのも楽しみすぎる。
本編だけで完成しており、これ以上何を足すものがある?としか感じなかった傑作SFアドベンチャーに追加された「これ以上は無い!」としか言えないDLC。
別記事で語り尽くしたのでもう何も言うことはありません。
Outer Wildsは人生。
異例の「殿堂入り」枠をこのたび設けることとなりました。もはやGame of the Yearどころか、Game of the Decadeとか、あるいはGame of the Lifeとかそういうレベルのゲームだからです。
Outer Wildsは、自分が知り及ぶ限りのゲームという媒体の、ひとつの到達点です。
Twitterのフォロワー各位ならもはや既知のことかと思いますが、筆者は本ッッッッッ当に面倒くさいオタクです。
ストーリーが響いてこなければそれがいったい何故なのか納得いくまでひたすら言語化し時にこき下ろし、キャラクターの言動に脚本都合の不自然さを感じたらすーぐ「脚本の傀儡になってるキャラには魅力を感じない」と言い出し、斬新で面白いゲームシステムを延々追い求めているために「ジャンルの基本にただ倣っただけ」で作る側の面白さの追求における執念あるいは狂気を感じないものには食指が動かず、UI/UXに関しても(同様の概念を扱う職業柄もあって)かなりうるさく、BGMがシーンに適合した使われ方をしているかプレイヤーの心を揺さぶるものかを気にし、このような数々の要素が高度に一体となった「総合芸術」こそがゲームでありどんな媒体よりも可能性に満ち溢れていると信じて疑っていません。
そんな面倒くさいオタクが、完全に打ちのめされたゲームです。
そんな面倒くさいオタクが、後生の気持ちで頼みます。
「新しい体験」、「他ではなかなか味わえない非日常」、「ただの暇潰しではない、脳をフル回転させる全力の遊び」、そういうものをゲームに求めている人たちへ。
どうかOuter Wildsを手に取り、遊び、できればDLCを含めて物語の結末を見届けてほしい。そして可能ならその過程を録画するなり文章をしたためるなり、何かしらの記録を残してください。
たとえ少々不親切な操作体系や、何もかも自分で考えさせられるハードな世界に苦しめられることになっても、それも含めて唯一無二の体験になるはずです。
謎で満たされた箱庭宇宙の先で、お待ちしています。
未プレー者は絶対に開いてはいけない(というか大半は意味不明であろう)筆者の航行記録、プレー後のトークセッションはこちらです。
Game of the Year
Shotgun King: The Final Checkmate
プラットフォーム:Steam
ジャンル:パズル
評価:10.0/10.0
チェスの移動ルールに則って、相手複数、こちらはショットガンを携えた黒のキング1体で戦うローグライトパズル。
ステージが進むごとに自身の強化と敵の強化のセットを2択から選択し、自身も敵も強くなっていく。自身は毎ターン動け、基本は移動(=リロード)するかショットガンをぶっ放すかの2択。敵は駒の種類によってHPや移動ターン周期が異なり、黒のキングを取られてしまったら即ゲームオーバー。
通常モードのTHRONEモードはEASY、NORMAL、HARD、VERYHARD、KINGの5段階難易度。VERYHARDの時点でかなりの手応え。
スピードラン用のゲーム内タイマー完備で走者への配慮に余念がない。
また運の要素は強いが特別な条件を満たした場合のみ出てくるボスや、それを倒したことの記録もされる充実仕様。ショットガンの射角や性能をどのように強化するか、どんどん増えて強化されていく白の駒群をいかに捌くか。ショットガン発射という乱数と、チェスのロジカルな面白さが奇跡の融合を果たした傑作パズル。
今後アップデートで更に要素やモードが追加されることに期待。
Steam徘徊中に見かけた瞬間「コレ絶対面白いゲームだ!!!」と確信して購入し、各難易度の攻略はもちろん隠しボスの条件を探して倒したり、(当時は総量の少なかった)実績を埋めにいくところまでガッツリ遊ばせてくれ、熱量高い濃密な時間を過ごせたことを評価してのGame of the Year。
チェスに手を加えたゲームといえば5D Chessなども以前一部で話題となったが、既存のチェスをさらにややこしくよりゲーマー向けに仕上げた異色作という印象が否めなかった。Shotgun Kingはチェスにショットガンというランダム要素を混ぜ込み、それでいてじっくりと思考する楽しみもきちんと共存させ、チェスの「コマの動き」さえ知っていれば遊べてしまう「発明」と言っても過言ではないゲームです。
レビュー執筆時点と比べて、現在は強化のバリエーションがいくつも追加されたり、モードの建付けが変更されたりと結構大掛かりなアップデートが入っている。特にTHRONEモードはEASY~KINGの難易度名が撤廃され、初期に所持する銃の種類もアンロックしたのちに選択できるようになっていたりとなかなかの変貌ぶり。またCHASEモードという四方から敵がスポーンしてくる耐久モードも追加された。
レビュー当時は未対応だった日本語にも対応済。
パズル好きなら絶対に遊んだほうが良い一作!
入選
A Monster's Expedition
プラットフォーム:Steam
ジャンル:パズル
評価:9.0/10.0
木を切り倒し、転がし、海に沈めて橋にして、離島を渡り探検する倉庫番ライクなグリッドパズル。
この手のゲームにしては珍しくステージクリア形式ではなく、全てのパズルフィールドが1つの超広大なマップで表現されている。最初は到達できなかった場所に後から到達して道が合流するなど、ステージクリア形式には無い味わいがある。
シンプルでできることは限られているが、ステージ構造によって序盤~中盤で「発生しないようにしている仕様」がかなり多く、ゲームの進行に伴い「こんなことも出来るのか…」と新しい発見をさせていくレベルデザインが非常に秀逸。
流石にBaba Is Youのようなひっくり返るほどの衝撃こそないが、充分完成度の高い秀作パズルゲーム。
倉庫番ライクパズルゲーム、Baba is Youがその後の世界に対してハードルを爆上げしてしまったため、今後自分が触るものはよほどのことが無い限り流石に…と思っていたんですが、杞憂でした。
「堅実」の一言に尽きるしっかりとしたパズルの面白さと、全てのステージがひとつに繋がった広大なマップを放浪する楽しさを評価しての入選。
世の中にはまだまだ面白いパズルゲームが沢山あるだろう・これからも生まれるだろうと思わせてくれた一作。
パズル最高。遊ばなくても面白さが大体わかるし、遊べばもっと面白いから!
Eldest Souls
プラットフォーム:Nintendo Switch
ジャンル:アクション
評価:8.5/10.0
わかる人はタイトルから容易に想像できる通り、ダークソウルフォロワーの見下ろし2D高難易度アクション。フィールドや探索要素はほとんど無くひたすらボス戦を繰り返すタイプ。
高難易度アクション、正直なところ「ちゃんと避けながらちびちび攻撃し続けて頑張りなさい」のデザインは延々と遊び続けてきてとうに飽きが来ているのだが、これは回避よりも攻撃でより大きいアドバンテージを獲得できる作りになっているのが面白かった。
もちろん敵の攻撃を避けなければ1~2発で死ぬ。だが攻撃を当てるのが回復やスキル発動に繋がるので、グダグダとヒットアンドアウェイをするのが正解ではないあくまでも攻撃が主体の戦いを楽しめる。意識を回避よりも攻撃に傾けたいバーサーカー気質なら遊んでみる価値あり。
今自分がアクションゲームに求める面白さは何なのだろうか?と、結構考えた。「A行動を見たらどの行動で対応しようか、色々試したが恐らくa行動が安定だろう、基本的にa行動で返す」をただ繰り返しているだけでは物足りない。「A・B・Cの複数の攻撃が同時に見えたときは必ずしもaで返すのは正解ではない、ではどうするか?」となると、複雑度は上がり正解はわかりづらくなる。複雑さは面白さにもつながるが、本当にそれだけで面白くなるなら「多くの雑魚から同時に攻撃されるタイミングがそこそこあるTUNIC」は自分にとってもっと面白いゲームであったはず。
複雑度の高い状況下では、アクションゲームのセーフティネットである「回避・回復行動」を取るのが結局のところ安定択となりがちで、それは緊張の緩和される時間なわけだが、その時間があまりに長かったり頻度が多かったりすると、ややもすると極端なヒットアンドアウェイが正解となり、アクションゲームとしての面白さはどんどん薄れ間延びする。*1
このようなジレンマの中で、敵の攻撃頻度や複雑度のバランスが絶妙に調整されているとかそういうことではなく、「万能ローリスクな選択肢はそもそも非推奨、ハイリスクハイリターンな選択肢こそが推奨されていること」が求める面白さのひとつに違いない、と思わせてくれたのがEldest Soulsであり、レビュー得点としてはあと一歩でありながらも入選に至った理由です。
みなさんはこんな面倒くさいこと考えてないで、とりあえずこのバーサーカー向けソウルライクを何も考えずに楽しむと良いでしょう。いや実際に遊ぶと色々と考えさせられることはあるんですけども。
総評とごあいさつ
ゲームから最高の体験も最低(に近い)の体験も貰った、振れ幅の大きい年でございました。
任天堂とモノリスソフトが生み出した呪物ゼノブレイド3の薄っぺらいストーリーといくつかの描写により、今後J-RPGに一切の期待ができない身体に改造されました。
またスプラトゥーン3の通貨・報酬が極度に出し渋られた超緊縮的ゲーム内経済によって「細く長く遊べと開発者から強いられること」に対するアレルギーが悪化しました。
これらの出来事は、企業としての姿勢やゲームの面白さを追求するさまをこれまで大いにリスペクトしていた任天堂の凋落を感じるところであり、極めて残念です。
一方で本記事であげたようなゲームを始めとする多くの名作・佳作とも出会い、良し悪し両方を味わうことで「自分がゲームに求める面白さとは一体何なのか?」をじっくり考え、しばしば言語化し、以前よりも更に深く「面白さ・面白くなさの正体を解明する遊び」に没頭した1年でした。Twitterのスペースで口頭でのゲーム語りも始めました。
来年もそんな自分の目線での「遊びの本質」と言えるものをビデオゲームやボードゲームを対象として大いに探し、考え、言語化するところまでをワンセットで楽しんでいくつもりです。
万人向けのやさしいやわらか~い表現でお届けするつもりは相変わらずまったくございませんので、毒も含めて楽しく喰らえる皆様、来年も引き続きお付き合いよろしくお願いします。
過去GOTY記事
*1:ちなみにこれに対して「楽曲の長さ=フロア滞在可能時間という制限」で攻略時間をコンパクトに区切り、逃げ主体の動きを許さない仕組みを採用しているのがCrypt of the Necrodancerであり、同作品の優れた要素のひとつなのだがそれはまた別の機会に…。