カクゼツ

一般大衆からは隔絶された面倒オタクの独り言。基本的にゲームのことばっかです。

レジスタンスアヴァロンの続編「Quest」を紹介する

この記事は何

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Quest: Avalon Big Box Editionを入手し、Questを何度か遊びました。
「これはレジスタンスアヴァロンを超えるポテンシャルを持っている!!」と確信しているのですが、2021年12月時点で日本語版無し・入手難度やや高・ゲームの複雑度高・プレー人数を揃える(時勢的な)難度高…など様々な要素からか一向に日本国内での情報が増えないため、まず自分が書こうと思った次第です。

そういうわけで、Questのゲーム概要、レジスタンスアヴァロンとの違い、ルール考察などをまとめてみました。

正体隠匿ゲーム大好きな筆者にとってイチオシの作品ですので、(少ないと思いますが)機会があれば是非遊んでみてください。なんなら首都圏内には持参して布教に伺いますのでご連絡ください。

本作にはレジスタンスアヴァロンの追加役職・追加ルールも同梱されているのですがそれは気が向けばまたの機会に…。

 

Questとは

Don Eskridgeが手がける正体隠匿ゲームの新作。Kickstarterでのクラウドファンディングを経て、2021年にリリースされました。

Don Eskridgeは、脱落者が出ず最後まで全員が議論に参加できるという、発売当時としてはかなり画期的な正体隠匿ゲーム「レジスタンスアヴァロン」(以下アヴァロン)を産み出したゲームデザイナー。Questはその流れを汲んだ新作であり、アヴァロンと似て非なるシステムで、より短いプレー時間で同等の駆け引きが楽しめます。

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コンポーネント(一部)

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役職カード(一部)

 

Questのルール

標準ルールとオプション、ディレクターズカットルールなどバリエーションがありますが、ここでは「ディレクターズカットルール」をベースとして説明します。あまりにも細かいルールは一部割愛しています。

ルール概要

プレイヤーは正義と邪悪の2陣営に分かれる。4人なら正義2人邪悪2人、10人なら正義5人邪悪5人と、両陣営ほぼ同数で、最大5回のクエストの成功/失敗を競う。

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役職カード 黄色の紋章が正義 赤い紋章が邪悪

 

リーダーはボードに書かれたクエスト参加人数に従って、任意のプレイヤーにチームトークンを配り、クエスト参加者を選出する。リーダーはこのとき更に「マジックトークン」をクエスト参加者のうち1人に持たせる。

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リーダーにより選出されたクエスト参加者は、成功カードか失敗カードのいずれかを秘密裏に提出し、全てのカードが成功ならクエスト成功、1枚でも失敗が混ざるとクエスト失敗となる。このとき失敗カードを出せるのは邪悪のみで、正義は成功カードしか出せない。ただし、邪悪でもマジックトークンを持たされた時は、成功カードしか出せなくなる。(役職の能力による例外あり)

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この場合はクエスト失敗となる

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成功・失敗はボード上にマーカーで記録する

 

エスト結果の発表後、リーダーは他のプレイヤー誰か1人を選び、リーダートークンを渡す。渡されたプレイヤーが次のクエストのリーダーとなる。一度リーダーになったプレイヤーはベテラントークンを保有しており、再度リーダーになることはできない。

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ベテラントーク

 

この流れを繰り返し、クエストを3回成功させれば正義の勝利となる。3回(4人の場合のみ2回)失敗しても直ちに邪悪の勝利にはならず、正義の逆転チャンスであるファイナルクエストに突入する。

ファイナルクエストではまず全員で5分間、誰が邪悪なのかを議論する。

その後、邪悪の役職であるブラインドハンターが「名乗り出て正義2名を指名し役職を当てるチャレンジ」であるハントを行うかどうか判断。ハントを行った場合、成功すれば邪悪の勝利、失敗すれば正義の勝利となる。
なおクレリックがゲームに含まれている場合は、必ずクレリックを指名し当てる必要がある。

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4人プレーでブラインドハンターが名乗り出た例

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正義2名が誰か 役職は何か を当てれば邪悪の勝利

ハントが行われなかった場合は、全員参加のラストチャンスに移行する。

陣営を問わず、全員が一斉に邪悪だと思うプレイヤーを2人指差す。その後邪悪だけが手を降ろし、「邪悪が全員指差されている」「正義は誰も指差されていない」を完全に満たしていれば正義の勝利、片方でも満たしていなければ邪悪の勝利となる。

例えばこのように指差し合ったとして…

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4人プレーのラストチャンス例

邪悪が正体を表し、手を降ろす。この場合は邪悪の勝利。

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4人プレーのラストチャンス例2 邪悪の勝利

もしもこうだったならば、正義の勝利。

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4人プレーのラストチャンス例3 正義の勝利

 

役職

正義と邪悪それぞれ様々な役職がある。下記は一例。

正義の役職

クレリック:第1クエストのリーダーが正義/邪悪どちらなのかを知る。

ユース:マジックトークンを持たされたら失敗カードを出さなければならない。

トラブルメーカー:正義/邪悪どちらなのかを申告する時、邪悪と申告しなければならない。

デューク:ラストチャンスの指差しで、邪悪が正体を現した後で誰か1人の片手を降ろしてよい。

アーチデューク:ラストチャンスの指差しで、邪悪が正体を現した後で誰か1人の片手を別のプレイヤーへ対象を変更してよい。

邪悪の役職

モーガン・ル・フェイ:マジックトークンを持たされても失敗を出してよい。

ブラインドハンター:他の邪悪が誰かわからない。ハントの権利を持つ。

 

アミュレット

プレー人数が一定以上の場合、クエストとクエストの間にアミュレットトークンが置かれている箇所がある。

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アミュレットトーク

このとき直前のクエストのリーダーは、次のリーダーを選出するのに加えて、アミュレットトークンの持ち主も選出する。

アミュレットトークンを受け取ったプレイヤーは、次のクエストの開始前に、他のプレイヤー誰か1人が正義/邪悪どちらなのかを秘密裏に知ることができる。

アミュレットトークンを持つプレイヤーは以後リーダーになることはできず、一度アミュレットの効果により正義/邪悪どちらなのかを知られたプレイヤーは、再度他のプレイヤーからアミュレットの対象にはならない。

 

Questとレジスタンスアヴァロンの違い

エスト参加者決定の多数決の有無

アヴァロンはリーダーが選出したクエスト参加者の承認/否決を多数決で行いますが、Questはリーダーの選択が絶対であり、否決されることがありません。よってアヴァロンの「できるだけ否決し様子見で情報を集める」という常套手段は通用しません。そのためゲームスピードが速く、そのスピード感を良いと感じる人もいれば、速過ぎて思考と情報整理が追いつかないという人もいるかもしれません。

リーダー実施回数の制約

アヴァロンはリーダーによる選出が否決されることがあるゆえに、複数回リーダーをやることがあるが、Questではリーダーをやるのは1ゲームにおいて1人1回のみ。このため「邪悪だけでリーダーを回し全てのクエストを失敗させるパワープレイ」が可能にも思えますが、それを抑制する制約もあります。その内容は、邪悪の勝利時に、リーダー実施済のプレイヤーを指すベテラントークンの保有者が邪悪のみであった場合、正義の逆転勝利となるというもの。(これが複雑度を高めているのは否めません)

適正プレー人数

アヴァロンは5〜10人で遊べるとされていますが、実際に遊んでみると5,6人では暗殺者がマーリンを運で的中させる確率の高さからゲームバランスが良いとは言えず、筆者は個人的に7人以上でのプレーを推奨しています。Questは3回遊んだのみですが、4人でも充分に正体隠匿の醍醐味を味わえる作りであると感じています。

ルールの複雑度

Questはアヴァロンと比べると複雑なゲームであることは間違いありません。

アヴァロンは正義にしろ邪悪にしろ「誰が邪悪かor邪悪かもしれない」程度の情報を持っているに過ぎません。(一部追加役職を除く)

しかしQuestは、役職の能力によって「能動的に判断しなければならない場面」が頻繁に訪れます。モーガン・ル・フェイはマジックトークンを持たされても失敗を出してよい、ユースはマジックトークンを持たされたら失敗を出さなければいけない、トラブルメーカーは第1クエストのリーダーのときやアミュレットを渡されたときに邪悪と表明しなければならない、など…。

これは正体隠匿ゲームの練度が高いプレイヤー同士で遊ぶ分には問題ないでしょうが、初心者にいきなりQuestを遊んでもらうのはややハードルが高いと言えるかもしれません。

 

ルール考察

ディレクターズカットルール

本作にはあたかもオマケのように別紙が同梱されており、そこにディレクターズカットルールが記載されているのですが、Don Eskridgeは最も推奨するルールがこれであることをBoardGameGeekにて複数回明言しています。

またDon Eskridgeは同様に、本作の出版にあたってパブリッシャーによるルール改変があったことも明言しています。そのひとつが「ブラインドハンターをオプション役職とするルールブック表記」のようです。

ルールを読みこんだり何度か遊んでも感じますが、ブラインドハンターによるハントは標準でゲームに組み込まれていなければゲームバランスが著しく悪くなる懸念があります。具体的には、正義側の役職者が早々に役職をカミングアウトし、正義だけでリーダーを回すことでゲームを決着させるのが容易であるというものです。
これを抑制するためにブラインドハンターの存在は必須であり、また正義の勝利後にもブラインドハンターのハントの機会を設けるバリアントも提案されているようです。

基本的にはディレクターズカットルールを標準として、そこから投入する役職の種類や数をアレンジするのが良さそうに思えます。

バリアントルール

前述のように、正義の役職カミングアウトにより、ファイナルクエストへ持ち込むまでもなく3回クエストを成功させる戦術は強力に見えます。(個人的にはメタゲームで対応できる範囲内にも思えますが、邪悪側が正義役職の騙りを要求されるため熟練者でなければ対応が難しいのかもしれません)

そこでDon Eskridgeが提案しているのが「ドロップシステム」というバリアントルールです。
正義の役職にはデューク、アーチデュークなどファイナルクエストでの指差しを操作するものがいくつか存在しますが、これらをゲームに投入する役職から排し、ゲーム全体のシステムとして事前に合意をしておくものです。具体的にはプレイヤー数が6人ならば1人、7,8人ならば2人、9人以上ならば3人が、片手を降ろす権利を得るというシステムです。

boardgamegeek.com

 

★2022/12追記:ディレクターズカットルールにおける人数ごとのゲームバランス考察

9~10人戦を20回程度、7~8人戦を数回、4~5人戦を数回遊んでみて、どのように役職やバリアントルールを適用すればゲームバランスが取れると感じたかの考察です。

共通:奇数人数=邪悪が多いため邪悪が強い。偶数人数=正義と邪悪が同数のため人数が多いほど正義が強い。

10人:正義がかなり強い。邪悪に有無を言わさず正義が3タテすることもしばしばあるため、正義勝利後のハントを入れても良い(が、それでも邪悪がクレリックを当てるのは困難で運次第になることが多い)。ArchDukeをDukeに差し替えても良い。また、邪悪の能力無しを1枚「Tricksterトリックスター)」に差し替えるのも面白い。Tricksterの「正義か邪悪かの申告を偽れる」能力により、クレリックの持つ情報やアミュレットで得られる情報の信憑性が落ちることで相対的に正義が弱体化する。

9人:やや邪悪が強くも感じるがちょうど良い。特段、役職差し替えでの調整の必要性も感じない。

8人:ちょうど良い。特段、役職差し替えでの調整の必要性も感じない。

7人:邪悪が強い。試してはいないが、邪悪の動きが一部限定され邪悪が弱くなるような邪悪役職を採用しても良さそう。

6人:未プレー。

5人:邪悪が強い。7人同様、邪悪が弱くなるような邪悪役職を採用しても良さそう。ファイナルクエスト前に役職が公開されるRevealerを入れるくらいでちょうど良いかもしれない。

4人:バランスがどうあれ、役職の差し替えが困難で調整の余地が無いに等しい。遊べるには遊べるが運要素も多分に含まれる。

補足

本記事の内容は分割の上、ボドゲーマへ寄稿しています。

bodoge.hoobby.net

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