カクゼツ

一般大衆からは隔絶された面倒オタクの独り言。基本的にゲームのことばっかです。

スプラトゥーン3 エキスパンション・パス サイド・オーダー

プラットフォーム:Nintendo Switch
ジャンル:アクション
評価:4.0/10.0

 

スプラトゥーン3の追加ソロモード。

エキスパンションパス(3000円)の発売から1年近く待たせるという殿様商売にたいへん驚かされたが、そのぶん全方面が作り込まれたものが出てくるはずと思ったし、ローグライトを採用したゲーム性は一見かなり面白そうに見えたため期待して購入しました。そして完全に裏切られました。

スプラトゥーンでローグライトというゲーム性に挑戦したことそのものは評価したい一方で、「任天堂が作るローグライトがこの程度」という事実に対する失望が大きい。

総じて感じるのは、ローグライトというジャンルの「それっぽさ」を安直に模倣しているばかりで、スプラトゥーンというゲームと混ぜ合わせるならどうするのが最高に面白くなるのかが考え抜かれているようにはまるで思えないということです。まあ納期とかきっと大変だったんでしょうけどね。それでも俺がやりたいのは「作業」ではなく「面白いゲーム」です。

 

全パレットクリアまでやっての感想です。

 

よかったこと

・射撃速度、射程の強化、スペシャルの連発など対戦モードではなかなか味わえない方向性となるブキや動きを楽しめる

・退廃的な世界観とアートワーク

・上記をしっかりと彩るBGM

 

不満点

・物量が少ない上に薄っぺらいストーリー 
ローグライク・ローグライトにストーリー性を持たせるのが難しいのは重々承知だがそれにしても酷い。ヒメとイイダが客寄せパンダにしかなっていない。周回前提で一応イベント会話は回数分用意されているものの、中身は無いに等しい。

・繰り返し遊ぶに到底耐えないバリエーション少ないステージ
ガチホコ、アサリ、ヒーローモード、ミステリーゾーン、オクトエキスパンション、これまでシリーズ通して蓄積してきた数多の構成要素の活かしどころだろうに、やらされることがポータル破壊・エリア守備・プロペラヤグラ運び・逃げる敵倒す・ボール運びくらいしか無いのはもはや手抜きと言われても仕方がないのでは?

・カラーチップ同士のシナジーの薄さ
ある程度想定された組合せがいくつかあるのはわかるが同色チップ同士のシナジーに留まっており、色の異なるもの同士など限定的な組み合わせでの大きなシナジーを感じられるようなものがほとんどない。攻略できるときの勝因はだいたいチップ単品の効果が強いだけであり、特定チップをある程度強化すれば大体どうにかなるのでビルドにこだわる必要性も薄い。たとえば配置の概念があって大きさや形によって効果量も違ったり、隣接色によってボーナスがあるとかいくらでもやりようがあっただろう。

・なんとしてでも繰り返し遊ばせたい魂胆が明け透けとした収集要素と報酬体系
敵を何回倒すとか、ひとつのカラーチップを複数枚セットしないと解放されない読み物があることに唖然。それだけの回数遊ぶに耐える面白いゲームを作ることを先に考えてください。
報酬体系はサーモンランほど法外なポイントを要求してこないので一見まともに見えてしまうが、永続強化のアンロックと報酬を全て獲得しようとするとかなりの「作業時間」を要することでしょう。

・相変わらず渋ることだけは抜かりがない思想丸出しのポイント(真珠)システム
永続強化(ハッキング)で難易度を下げられたりゲーム性が拡張されるのは近年のローグライク・ローグライトによくある順当なシステムだが、解禁されたそれらを採用するとクリア後の周回で解禁に必要なポイントを多く獲得するためのハイリスクハイリターンモードの「報酬倍率が下がる」のは理解不能。プレイヤーが楽しみながら何かを稼ぐのがそんなにも嫌で悔しいのか?
「何かをするorしないことで損をしてしまう」とプレイヤーに感じさせる技術だけは、あらゆるゲームの追随を許さないレベルで洗練されていると思う。捨ててしまえそんな技術。

・ゲーム性の拡張に対して罰を与える思想
先の解禁要素と報酬倍率については、ゲームの難易度が劇的に変わる自機性能に関する部分の強化において倍率が下がるならまだわからなくはない。しかし、自販機やフロアの選択肢リセット、ドローン用チップなどはれっきとした「ゲーム性の拡張」であるにも関わらず、それらをONにしてもハイリスクハイリターンモードの倍率を下げてくるのは本当にどうかしている。
そのようなゲーム性拡張を行った上でなおリスクとリターンの兼ね合いを楽しめるよう、更に難易度を上げるような追加要素を用意し、それらのONによって倍率が上がるようにするべき。

・ブキのバリエーションすら出し渋る姿勢
ローグライトにおいて武器種を多数用意し一部を解禁要素とするのは確かに一般的ではある。しかしスプラトゥーンは対戦モードで「自身の持ちブキ・得意ブキ」という概念が生まれるゲームなのに、開発者が想定する順番で遊べと言わんばかりに解禁要素にされている。好きなブキから遊んで何がいけないのか?

 

この10年前のE3のスプラトゥーン発表映像を見た時の「凄いゲームがくる予感」を今でも鮮明に覚えていて、1を大いに楽しんだからこそ、今のスプラトゥーンの凋落ぶりにはただただ失望するばかりです。