カクゼツ

一般大衆からは隔絶された面倒オタクの独り言。基本的にゲームのことばっかです。

オープンワールドで紡がれた新たな"ゼルダの伝説の物語性"

 

ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルドが発売されてから早3週間が過ぎた。

何をするのかどこから探索するのかも全て人それぞれなので、なかなか語りづらい部分ではあるが、重厚なストーリーと相性が悪いと言われているオープンワールドにおいて、ゼルダの伝説はどのように、どのような物語を紡いだのか、そしてそれが本当に素晴らしい出来だったということをアピールしたい。

どうしても多少のネタバレを含めざるをえないため、未プレーだがこれからプレーするつもりであり且つ世界観全てを知らないままでいたいという人はここで回れ右して頂きたい。

ゼルダ史上最も重みのある"時"

これだけは書いておかないと始まらないので書かせてもらうが、ブレスオブザワイルドは100年の眠りから目覚めたリンクが記憶を取り戻しながら、ガノンの討伐を目指す物語だ。 ダンジョンを攻略したり、フィールドの特定の場所を訪れることでリンクは断片的な記憶を取り戻していく。

ゲーム開始直後、目覚めとともに始まりの台地に放り出される。もしかしてこの世界にはもうリンクと老人以外に誰もいないのでは?という不安すら感じさせられる始まり。 やがて村を訪れ、記憶を探し、ガノン討伐を目指す中で、ゼルダ姫や仲間、そして生き残った他の人々がリンクに託した思いを知っていく。 記憶を取り戻すためには世界各地を旅する必要があるという点と、世界をただただ走り飛び回るだけで楽しいというゲーム性が、これ以上ないくらいシンクロしている。

しかしながら記憶を探さなくとも、仲間達の協力を得なくとも、ガノンは倒せてしまうのが、本作の大胆な所だ。それでも記憶は決してオマケ要素などではなく、ブレスオブザワイルドの世界観を味わう上で重要な役割を担っている。

世界の各所を訪れるたびリンクが思い出していくのは、100年前に共にガノンと戦った仲間やゼルダ姫とのやり取りであり、それは時間にして数分のものが十数個と断片的でありながら、想像の猶予を残したとも言える緩やかな繋がりが感じられるし、それらがあるからこそ、100年後=今の世界での物語が活きてくる。特にダンジョン攻略時に再会出来る仲間たちの台詞回しは、過ぎ去った時の重みがひしひしと伝わってくるので必見必聴である。

思い返せば名作と謳われることの多い64時代のゼルダは、時のオカリナムジュラの仮面も、"時"は行き来したり遡ったり出来るものだった。何度も繰り返して様々な出来事を少しずつ変えて先へ進んでいくというのはゲームシステム的にも物語的にも良く機能していたし、あの2作においてはそれは正解だった。 しかしブレスオブザワイルドでは過去は"終わったこと"であり改変出来ない。そこにある哀しみを思い出していく事が、プレイヤーの眼前の物語をよりドラマティックなものに仕立て上げていると言える。

記憶を取り戻していくリンク、それを同じ目線で体験するプレイヤー、この構図があるからこその、感情移入と感動がそこにある。

ゼルダの伝説らしい物語とは

100年前の取り戻すべき記憶の数は、正直に言ってしまえばそう多くはないので、ボリューム不足を嘆く人もいるかもしれないが、それでも個人的にはブレスオブザワイルドの物語性はゼルダの伝説史上最高と言っても過言ではないものになっていると思う。

そもそもゼルダの伝説らしい物語とは何なのだろうか。

例えば過去作から時のオカリナを例に挙げてみると 旅立ち、ゼルダ姫との出会い、ガノンドロフとの対峙、時を超える力の獲得、ダンジョン巡り、賢者達の覚醒、ガノン討伐、と、随所に驚かされるような展開はあるものの、本当にザックリだがこんな所である。

ハッキリ言って王道中の王道的な展開だ。それに加えて3Dとなったダンジョンにおける質の高い謎解きも備えているという隙のなさだったからこそ、これまで過去最高傑作の座にあったのだろう。

比べて初代ゼルダの伝説はどうか。 インパからゼルダを救うよう託される、ダンジョン巡り、ガノン討伐、と書けばプレイ済の人はおわかりのように、言うまでもなく、ブレスオブザワイルドは大枠としては時のオカリナよりも、初代ゼルダの伝説に近い作品だ。ロゴが同じなのは最初は驚いたが今となっては非常に納得がいく。

しかしこれは決して最初から意識していたのではなく、30年という歳月の中で開発者が積み上げてきた「ゼルダの当たり前」を今回見直した結果に過ぎないのだろうということは各所のインタビュー等開発者の話から伺える。

それでいて、各ダンジョンにおいては突入前は100年前の仲間に縁のあるキャラクター達と協力して困難を打開し、突入後は捕われた100年前の仲間(の魂)と協力してダンジョンを攻略するのだが、この部分の流れはまさに王道そのものであり、構造はやや違えど時のオカリナと親しいものがある。

大枠は初代さながらの自由度、しかしダンジョンにスコープすると時のオカリナに匹敵する王道ストーリーがある、というハイブリッドな作りだからこそ、シリーズを遊んできた人にはどこかしら懐かしい、けれども新しさも感じられる「ゼルダの伝説らしい物語」に仕上がっていると言えるのではないだろうか。

終わりに

ブレスオブザワイルドはオープンワールドゼルダの融合作品として、その世界の広大さ、自由度の高さは多くの人が口にしており、もはやここで語るまでもない。 しかし本作の魅力はそれだけではなく「ゼルダの伝説としてこれまで以上に趣のある物語」であることもまた、多くの人がブレスオブザワイルドを評価している理由のうちの1つなのだろうと思う。